想う心、受け取る体
宮崎歩/DTM:柘榴
想う心、受け取る体
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「お前っていつも同じスナックかじってるよな…」
「あはは。欲しいのかい?ジーグ」
「なんでそういう話になるんだよ!」
「…そう言いながら手を伸ばすところ、ジーグらしいね。ちゃんと人の話を聞いて合わせてくれる優しさとかね。…で、なんだっけ?あ、このお菓子か。私がまだ児童院の初等部だった時に、大きな怪我をして休んでた事があるんだ…」
児童院をとうに卒業し、魔道専門学へ進んだ2人のある日の会話。あの日の約束は今では固い友情と腐れ縁となっていた。
「クラスメイトの子がね、これを食べると元気になるからって買ってきてくれたんだ。ベッドから動けなかったけど、来てくれた子達とみんなで食べたんだ。それ以来かな…ハマったみたいだ」
はははと優しい笑顔で、美味しそうに頬張る。サクサクと軽い音、心地いい歯触り。
「相手を思いやるってとても尊い事だよね。元気になって欲しいと願ってもらうなんて。私は嬉しいんだ、とてもね」
そう言って、一掴みを食べきってしまったジーグに、アイツはすっとお代わりを差し出した。
「元気にか…って…」
こんな素敵なある日の思い出を、まさかのタイミングで思い出す自分はつくづく間が悪い…と頭を抱えた。そのままの姿勢で赤茶の髪の間から、ちらりとニフを見やる。やはり変わらぬ真摯な瞳で、紛れもなくジーグを心配している。
なぁ、お前はこういう時どうすんだ?やっぱり嬉しいんだって飲むのか?この謎の液体を…なんか…なんだこの香り。薬っぽいような、焦げたような香りのする…この液体を!教えてくれ!?
銃作りに行き詰まった時以上に、亡き彼に話しかけるジーグ。それ程までに、ジーグに精神的圧をかけ続ける…お手製ドリンク。悩み続ける姿が余程苦しく見えたのだろう、ジーグにドリンクを掴ませたニフの手から力を感じた。
「あの…どこか苦しいんですか…?もしかして、病気なんでしょうか?熱は?怠さとか、吐き気はありませんか?ドリンクなんかより、お医者様に連絡した方が…私、呼んできましょうか?」
…ああ、負けだ…。お前の言う通りだ…くそ!的外れでも、心って温かいんだな…。あの日のアイツの言葉に心の中で悪態をついた。
「いいや、違うよ…ニフ。言う通り、疲れてんだろうな。有難いよ、ちょうどそういうの欲しかったんだよな…」
上手く笑えただろうか?ジーグには分からなかった。必死に笑顔を見せて、できる限り穏やかにニフを制止すると、ジーグを握る手を払いゆっくりとその液体を口へと運ぶ…耐えられなくはないが、なんだ…この説明しにくい香りは!ヒュッと小さく息を止め、立ち向かう勇気を振り絞り、ついにゴブリと喉を鳴らして飲み込んだ。
…味は無事だと!!??香りどおりの、焦げてすれた様な苦味と、口に広がる粉っぽさ。ブレンドした種類の多さ故の複雑で、共存も同調もコラボレーションもしていない個性豊かを通り越した、個性的な味。ドリンクを飲み込むために上を向いた目は白くぼやけていく気さえした。
「どうですか?味は何とか上手く調節できたと思います!なかなか難しかったんですから」
照れ臭そうに自慢するニフ。そういうと、彼女もつーっとドリンクを飲み込んだ。…嘘だろ?味覚大丈夫なのか!?叫び出しそうな口を抑えた。
すると、炭酸のように口にパチパチと刺激が走る。不思議な爽快感と、甘みの残るほろ苦さが口に広がる。まるで…
「ビールみたいな後味になるんですが、飲みやすくするのが難しくて!」
そういうと、焦げた枝に実っているドングリを取り出す。真っ黒なドングリをもぐと、パリパリと剥き出す。青白い光が時々実からパチッと飛び出す、ホクホクとした実が出てきた。
「アグルさんから分けていただいた、雷の神木である樫の実です。その木に雷が落ちて焼けたドングリには生命の力を呼び覚ます効果があるそうなんですが、どうも飲みやすくするのが難しくて…ドロドロになるんですよねぇ」
はーとため息をつくニフを後目に、先程剥いたドングリをつまんで食べた。あっと声を上げるニフ。パチッと刺激が走るが、苦味と仄かな甘み…なかなか癖になる味だ。
「んー…ドリンクに固執しなくても、これだけで美味い…おお…凄いな」
気だるげな目がみるみる開いていく。視界が広がる感覚、冴えゆく頭…これはいいや!ニンマリと爽快感に顔がほころぶ。
「ありがとうニフ。元気になって欲しいって気持ちが、何だかんだで1番嬉しい。また来るな!」
ジーグは颯爽と出張所を後にした。
「…が、頑張ったんだけどなぁ…ドリンク…」
目標を達成し感謝もされたが、肝心のドリンクより、樫の実を褒められたニフは複雑な顔をした。
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賽子クエスト 成功
リザルト
クリティカル 1
確率 1/2
オーバーキルワード 無し
クエスト上限が3になりました。
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