時刻は23時40分。外を歩いている人などほとんど居ないのに、街の中はまだお祭り騒ぎかのようにイルミネーションが爛々と輝きを放っている。ほとんど2人きり、寒い中店用のドレス姿のアマンダと、相変わらずタンクトップ姿のイーサン。イーサンはそうでもないようだが、アマンダは流石に寒いのか、ぶるりとその身を震わせる。それでも、握られた手の熱さと力強さを振りほどいてまで暖を取ろうとは思わない。
そうこうしているうちに、小刻みに震えるアマンダに気づいたのかイーサンが立ち止まって振り返った。
「あっ、寒いですか!?どうしよう、暖めるものがなにも…あっ、あ、の……っ失礼しますッ!!」
「アラアラアラアラ」
ガバッという効果音が付きそうなほど勢いよく、アマンダはイーサンに抱きしめられる。伝わる体温はとても高く、そんなハズがないのに火傷しそうなほど熱い。
恥ずかしいのか気まずいのか、黙り込んで抱きしめるイーサンにアマンダはふっと小さく笑いを漏らして抱きしめ返す。まさか抱きしめ返されるとは思っていなかったのか、イーサンの身体がビクリと小さく跳ねた。
「あ、あの…!」
「アンタ、相変わらず熱いわねェ。火傷しちゃいそう」
「火傷!?あああすみません!!すぐ離れます!!」
「どうしてそうなるのよ、全く純粋ねェ…。いいから暫くこのままよ、いいわね!」
「は、はい…」
緊張なのか、それとも恋心からなのか。ドクドクと激しく脈打つ心臓がうるさい。それはもうどちらのものなのか分からなくなるほど大きく音を立てて早鐘を打っていた。しかし不思議と嫌ではなくて、心地のいい音にしばし浸ってから、アマンダが言葉を打つ。
「…アンタ、最近来なかったじゃない」
「えっ」
「店よ、店。もう、客からも店子たちからもからかわれまくって大変だったのよォ?…それに、ほんの少しだけ寂しかったわ」
「!」
「あの日…アンタの様子がおかしかった日よ、真面目な顔でいつもと違う声色で告白されて…正直に言うと嬉しかったのよ。本気で愛してくれてるって伝わったわ。だからアタシも応えたかった、でもそうは出来なかったの…アタシったら本気の恋には意地っ張りで臆病になるのね。イーサンにはアタシなんかより相応しい子がいるはずだから、なんて言い訳しながら…本当はアタシがアンタに裏切られて傷つけられるのが怖かった。逃げたのよ、最低なオンナね」
「そんなこと…!っ、あの日…俺は玉砕覚悟で最後の告白をしたんです。これで受け止めて貰えなければ諦めよう、って…貴女の心が分からなくて、気持ちを受け止めて貰えない辛さから俺は逃げようとしたんです。断られることは分かってました…だから…」
「…バカね。そんなに辛くなる前に諦めたらよかったのに。アタシなんてなーんにもイイトコないわよォ?」
そう言った瞬間、離れられずにいた身体を引き剥がされてガシリと肩を掴まれる。
「そんなことないです!アマンダさんは美しくて、格好よくて…貴女は俺の憧れなんです!でも、貴女の弱いところだって沢山知ってます!辛いことがあっても表に出さないことも!諦めがよすぎるところも!そんなところも全部全部ひっくるめて!俺は貴女を守りたい!だから、その…」
「…アハハ!アンタ、そんなところで尻込みしてんじゃないわよ、もう!…アタシね、気づいちゃったのよ。アンタのことが好きだって。だから責任取りなさい!いいわね?」
「!?ア、アマンダさん、それって…」
「末永く、それこそ生涯かけて幸せにしてちょうだい」
「…!勿論です!!一生離れません、必ず幸せにしてみせます!」
クリスマスの奇跡なんて信じていなかったけれど、今日だけは信じてやってもいいかもしれない。
これまでにない幸福感に包まれながら、熱い抱擁を受け止めてアマンダはそう思うのだった。
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🍶
どこかで鐘が鳴って
らしくない言葉が浮かんで
🗿
寒さが心地よくて
あれ なんで恋なんかしてんだろう
🖤
聖夜だなんだと繰り返す歌と
わざとらしくきらめく街のせいかな
🗿
会いたいと思う回数が
🍶
会えないと痛いこの胸が
🖤
君の事どう思うか教えようとしてる
🗿
いいよ そんな事自分で分かってるよ
サンタとやらに頼んでも仕方ないよなぁ
🍶
できれば横にいて欲しくて
🗿
どこにも行って欲しくなくて
🖤
僕の事だけをずっと考えていて欲しい
🍶
でもこんな事を伝えたら格好悪いし
長くなるだけだからまとめるよ
🍶君が好きだ🗿
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