アダルトチルドレン
🖤黒川 ひびき(cv.小日向奏乃)❤️桃園 きらり(cv.瑠莉)
アダルトチルドレン
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第6話「暗闇の光、黒髪の少女」
暗闇に吸い込まれたきらりは必死に両手足をバタつかせた。けれど、何の感触もない。今自分が上を向いているのか下を向いているのか、自分の指先どこにあるかも分からない本当の暗闇がだだ広がっている。怖い。怖い怖い。それなのに叫び声すら暗闇に吸い込まれてきらりの耳に届かない。
(大丈夫だ、落ち着いて)
そこに声が響いた。どこかで聞き覚えのある声。
暗闇の中で初めて知覚できたものに、きらりの呼吸は少しずつ落ち着いていく。
(ここは『精神』の世界だ。肉体や声みたいな『物』は意味が無い。だから、自分の心の中で自分の姿をイメージするんだ)
(イメージ……?)
言われた通りに自分の姿を頭の中で思い描く。すると自分の手足が、着慣れた制服が、暗闇の中にぼうっと浮かび上がる。
「本当だ……!」
思わず喜びの声をあげたところで、目に飛び込んできた姿にきらりはハッと息を飲んだ。
「……ッ!?リトルリトル……!?じゃ、ない……?」
包帯や絆創膏だらけの黒髪の少女。けれどその顔にはわざとらしい作り物の笑顔ではなく、どこか戸惑うような表情が浮かんでいる。
「もしかして、あなたリトルリトルに殺された……」
「ひびきだ。黒川……ひびき……」
少女はつっけんどんに答えた。けれど気まずそうにそらされた視線に、彼女が不機嫌な訳ではなくどう接したら良いのか分からないのが伝わってくる。
「なんでこんな所に……?あ、そういえばリトルリトルが魂は捨てたって……」
「そう、それからずっとここをさ迷ってた」
「そんな……」
さっきの恐怖を思い出してきらりは声を震わせる。こんな所をずっと一人で漂うなんて。想像するだけで恐ろしい。
「いや、リトルリトルがオレの体を使ってたから、元の世界を少し覗くことができてたんだ」
ひびきが指し示したほうを見ると、暗闇の中にぼんやりとした光が浮かびあがり景色が映し出された。羽間市の見慣れた町並みとひび割れた空だ。もうオレの肉体はリトルリトルに捨てられたから動かないけどな、と隣でひびきが言葉を続けた。
「……ずっとアンタたちのことを見てた。人生をやり直そうとしてたことも、魔法少女として力を合わせようとしたことも……」
「アハハ……私たち……死んだ時に『未来』なんて既に手放してたんだよね。それなのに希望なんて抱いちゃって、馬鹿みたいだよね……」
顔を俯かせたきらりの手を、ひびきの手がぎこちなく握ってくる。思わず顔をあげると、ひびきは言葉を一つずつ拾い上げるようにぽつぽつと話し始めた。
「きっとオレが死んだ時に、親は悲しんだりしなかったと思う。むしろ、余計なことしやがってって怒ってたんじゃないかな」
「……」
「でも、1人だけオレの死を悼んでくれた」
迷うように逸らされていたひびきの視線が、きらりの視線とぴたりと合わされる。
「アンタだよ」
血まみれのオレの目をそっと閉じて「ごめんね」と言ってくれた。これまでそんなふうに誰かに優しく触れられたことも、苦しみを自分のことのようにすくいあげてもらったこともなかった。
「ずっと自分の生きてきた意味なんて無いんだと思ってたんだ。こんな世界にオレのいる場所はないんだって思ってた」
「うん、うん……」
「けど、死に際にお前の言葉を聞いてオレが知らないだけで探せば何処かに居場所があったんじゃないかなって、死んでから初めて思えることが出来たんだ」
「うん、私も、そうだったよ……」
きらりの瞳から涙が溢れる。
楽しかった。初めて苦しみを共有できる仲間たち。放課後に待ち合わせて話すだけで楽しくて。多分他の人にとっては普通で、でもずっとずっときらりが憧れていた世界。暗闇の中で覗き込んでは、きっと自分には入り込めないと諦めていた温かな場所。
「悔しいよ……!ほのかちゃんの気持ち、痛いくらい分かるんだ……どうして私たちは『そこ』に入れて貰えないの?皆には当たり前にあるのに?もう死んだ私たちにそんな資格は無いって分かってるのに、もしかしたらって気持ちを諦められないの……」
ただ誰かに愛されたかった。
ありのままの自分を抱きしめて欲しかった。
自分が生まれた意味を感じたかった。
それを知らぬままにまた自分たちは消えていく。誰に悼まれることもなく。意味もなく生まれてきて命を失うのだろう。この世界と一緒に。
──本当にそれでいいの?
そんな言葉がきらりの中に生まれた。
(死んだことをこんなに悔やんでるのに……また同じように死んでいくの?)
それは希望では無かった。もう希望は抱かない。死人には抱く権利もない。だからこれはきっと後悔だ。同じ思いをしたくないという後悔。
だからきらりは涙を拭いて顔をあげた。
「皆が……きっとこんな暗い所で一人ぼっちで不安がってると思う……だから、迎えに行かなくちゃ。ひびきちゃん、手伝ってくれる?」
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🖤黒川 ひびき(cv.小日向奏乃)
❤️桃園 きらり(cv.瑠莉)
🖤愛されたかっただけなんです。
まぎれもないパパとママに
殴られようが蹴られようが
僕は愛されたかったんです。
❤️笑顔でいつも隠しました。
あなたに褒めてもらうために。
「あなたが私のすべて」だと
言ってくれる日を待っていた。
🖤自分だけ違う気がした。
❤️それじゃ今日も優しいふりを。
All:愛されたい今日にすがるようにぼくは
生きたい死にたいを繰り返してさ
❤️曖昧にすすんでく
🖤したり顔で醜い顔を隠す。
All:変われない今日も一人なんだろう
誰も彼も何も信じてないからさ。
目的はただ一つ。
「あなただけが全て」と言われたいだけだ。
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♡伴奏♡桜様
https://nana-music.com/sounds/03d9fc3e
♡タグ♡
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#黒川ひびき #桃園きらり #ネガマジガールズ
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