【朗読】『ひかりがほげた』
読:◯◯ 作:風待十夜
【朗読】『ひかりがほげた』
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【新nana用台本】
長めの朗読はいかがでしょう。
おおよそ二分半~三分で読めるはず。
BGM足らん時はここの音ミュートして、何か入れてくれ。
人称変更ok
あえて「ほげる」という方言使っています。
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障子のほげたところからそっと覗く。
目立たないように、一番下の角のところに小指を突っ込んだ。
何の変哲もない和室のはずだけど、いつもよりぴかぴかしてる。
世界がいつもより輝いてた。
ほがすのってわくわくする。
その先に何があるのか分からないのがいい。
ようやくひとつほげたテレホンカードから世界を覗いた。
公衆電話ボックスの外は、いつもより眩しくて鮮明だ。
きらきらして見えた。
今度は少し遠ざけて光に透かしてみる。
ぎらぎらが向こうから通り抜けて来ようとした。
世界は遠くなるどころか、距離を縮めてきた。
ほげてるのって目が眩む。
向こうから、私はどう見えるんだろう。
私の頭の中もほげている。
ぽっかりと真っ暗で、何もない。
障子やテレホンカードみたいに、簡単にほげてしまった。
あそこの、一部分、少しだけ。
底が見えなくて、ぎゅうぎゅうする。
先のないどこかに連れていかれそう。
でも、ここはほげてるままでいい。
いつかつやつやの硝子をはめるから、そのままで。
絆創膏で蓋をしようと伸びてくる手を叩き落とした。
真っ暗な夜の空を見上げる。
数えきれないくらい沢山ほげてる。
向こうから溢れて漏れてくる光。
一番外側のいちばん広い世界は、たぶんばちばちしてる。
星明かりが可愛いのは、暗幕のお陰だ。
ほげてる所のどっちかが暗くて、どっちかが明るい。
バランスをとるためにほげてる。
世界はほげて完成している。
世界を裏返したら、きっとプラネタリウムのかたち。
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BGM:魔王魂「piano34」
説明
ほげる→穴が空くこと
※はなを「ほじる」と同じイントネーション
『あるばむ』シリーズを蔵出し。
全四作。
pixivにも出してる台本。
裏話はXのどこかにあります。
プレイリストに他にも台本置いてます。
#とや図書室
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コメント
2件
- 風待十夜(とーや)
- テトミヤお借りしました! 素敵なお話ありがとうございましたー!!